李香蘭見たさに観衆が日劇に七周り半!歌う映画スターは日中どちらの国の人?

昭和16年、東京・有楽町の日劇を約10万人もの観衆が取り囲みました。

人々のお目当ては、当時爆発的な人気を誇った歌う映画スター・李香蘭です。

しかし、彼女には誰もが驚く秘密がありました。

中国人スターとして知られた李香蘭の本名は、実は山口淑子という日本人だったのです。

なぜ彼女は「李香蘭」として大スターになり、終戦後には過酷な運命に巻き込まれたのでしょうか。

目次

李香蘭を見たさに10万人!日劇七周り半事件とは?

昭和16年2月11日、紀元節の東京・有楽町にある日本劇場(日劇)には、李香蘭をひと目見ようと大勢の人々が押し寄せました。

その数は、なんとおよそ10万人

日劇を取り囲む人の列が7周半にも及んだとされ、後に「日劇七周り半事件」と呼ばれるほどの社会現象になりました。

当時の李香蘭は、満州映画協会(満映)からデビューした人気女優であり、歌手でもありました。

流暢な日本語と美貌を兼ね備えた彼女は、映画だけでなく歌でも人気を集めていきます。

しかし、ここで大きな疑問が浮かびます。

なぜ「中国人スター」の李香蘭は、これほど日本で熱狂的な支持を受けたのでしょうか。

実は李香蘭は、中国人ではありませんでした。

李香蘭は日本人だった!中国名の意外な由来とは?

李香蘭の本名は山口淑子です。

両親は佐賀県出身の父と福岡県出身の母で、れっきとした日本人でした。

ただし、山口淑子は中国で生まれ、中国で育っています。

父親の親友だった中国人の李際春将軍と家族ぐるみの親しい関係があり、きょうだい全員が李家から名前をもらったことから、「李香蘭」という名前が生まれました。

つまり、日本人として生まれながら、中国で育ったことが李香蘭という存在を形作ったのです。

美しく成長した彼女は父親の友人に見いだされ、満映から映画女優としてデビューします。

長谷川一夫と共演した『白蘭の歌』『支那の夜』『熱砂の誓い(建設の歌)』の大陸三部作は大ヒットしました。

さらに『支那の夜』で歌った「蘇州夜曲」は、作詞・西條八十、作曲・服部良一による名曲として現在まで歌い継がれています

一方、李香蘭の人気には、当時の時代背景も関係していました。

映画や音楽を通して中国への憧れを広め、満州や大陸への進出を正当化するという、国策的な側面もあったのです。

そのため、彼女は日本と中国、二つの国の間で複雑な葛藤を抱えることになります。

李香蘭は中国人から山口淑子へ!二つの祖国に揺れた運命とは?

李香蘭自身は、中国で生まれ育った経験から、中国を「母の国」、日本を「父の国」と考えていたと語っています。

しかし、昭和20年8月15日、終戦を迎えたことで彼女の立場は一変します。

上海で玉音放送を聴いた李香蘭に、日本軍の報道部長は「日本人であることを表明するか、中国人として生きるか」という厳しい選択を迫りました。

彼女の答えは明確でした。

「私は日本人。山口淑子に帰ります」

ところが、これで安心できたわけではありません。

中国では李香蘭を「漢奸(売国奴)」とみなす動きが起こり、彼女は軟禁状態に置かれます。

一部では銃殺刑になるとの報道まで出ました。

そんな彼女を救ったのが、思いがけない一枚の証明書でした。

両親から届いた荷物の中にあったのは、幼い頃に大切にしていた日本人形。

そして、その人形に託されていたのが日本人・山口淑子であることを証明する戸籍謄本でした。

この証拠によって、李香蘭は中国人ではなく日本人であることが認められます。

昭和21年3月末、彼女は引揚げ船「雲仙丸」で上海を離れました。

船が港を離れるとき、ラジオから流れていたのは、彼女自身が歌った「夜来香」でした。

愛した中国を、歌声を聞きながら去る――。それは、李香蘭という歌う映画スターから、山口淑子という一人の日本人へ戻っていく、忘れがたい瞬間だったのです。

まとめ

  • 李香蘭は昭和16年、「日劇七周り半事件」と呼ばれるほどの爆発的な人気を誇りました。
  • 李香蘭は中国人スターとして知られていましたが、本名は日本人の山口淑子でした。
  • 『支那の夜』の「蘇州夜曲」などで、歌う映画スターとしても大きな人気を集めました。
  • その一方で、国策映画に出演したことから、日本と中国の二つの国の間で葛藤を抱えていました。
  • 終戦後は「漢奸」とみなされ軟禁されましたが、戸籍謄本によって日本人であることが証明され、帰国を果たしました。
  • 李香蘭の人生は、戦争によって「国籍」と「自分自身」の間で翻弄された一人の女性の物語でもあります。
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