二村定一は、昭和初期の日本でジャズや洋楽を取り入れた歌唱で人気を集めた先駆的な歌手です。
その存在に強い憧れを抱いていたのが、後に国民的歌手となる藤山一郎でした。
藤山一郎は二村定一の伴奏を務めながら、その歌い方や表現力を間近で学んでいたのです。
しかも、ただの憧れではありませんでした。「いつか二村さんを追い越したい」と考えていたのです。
今回は、二人の知られざる関係と、藤山一郎が二村定一から学んだものに迫ります。
二村定一は日本初のジャズ歌手として脚光を浴びた!
画像2.jpg)
二村定一は、昭和初期の日本で洋楽的な歌唱を広めた歌手の一人です。
当時はジャズそのものが現在ほど一般的ではなく、外国から入ってきた新しい音楽を日本人がどのように歌うのかが注目されていました。
そのなかで二村定一は、独特のリズム感と明瞭な歌詞の発音を武器に人気を獲得しました。
藤山一郎の自伝でも、二村定一は「人気絶頂」の歌手として描かれています。
藤山一郎は二村定一のことを「ベーちゃん」と呼び、友人とともに座敷へ遊びに行くこともあったと振り返っています。
「べーちゃん」の由来については、二村本人が「ベートーヴェンの『ベー』から」と説明していたとされます。
一方で、大きく突き出た鼻が『シラノ・ド・ベルジュラック』の主人公を連想させたことから付いたという説もあります。
まさに、当時の二村定一が歌だけでなく、個性的なキャラクターでも人々を魅了していたことを物語るエピソードです。
藤山自身は、その二村定一について歩き、歌う際にはピアノ伴奏を担当していました。
つまり藤山一郎にとって二村定一は、単なる人気歌手ではありません。
すぐそばで歌唱技術を学べる、憧れの先輩だったのです。
藤山一郎は二村定一の歌い方をどう見ていた?
画像3.jpg)
藤山一郎が特に注目していたのが、二村定一の歌い方でした。
自伝では、「唄いぷり」や「歌詞がはっきりしている点」が大いに勉強になったと振り返っています。
音楽学校で本格的な声楽を学んでいた藤山一郎にとって、二村定一の歌唱は学校で学ぶクラシック音楽とは違った魅力を持っていたのでしょう。
特に重要なのは、藤山一郎が二村定一の歌を「聴いて終わり」にしなかったことです。
自らピアノ伴奏を務め、すぐ近くで歌声を聴くことで、プロの歌手として聴衆を惹きつける実践的な歌唱法を吸収していったと考えられます。
そして藤山一郎は、やがて「いずれは自分も二村さんのような歌手になろう。いや、彼を追い越すような歌手になろう」と考えるようになります。
ここに、単なる「憧れ」だけではない、藤山一郎の強い向上心が表れています。
二村定一と藤山一郎の収入差が生んだ「追い越したい」という思い!
画像4.jpg)
当時、人気絶頂だった二村定一や佐藤千夜子の月収は、「1000円」(現在の価値に単純換算すると数十万円~100万円程度とも考えられます)といわれていたと藤山一郎は回想しています。
藤山は「音楽学校を卒業した自分なら2000円は取れるのではないか」と考えていました。
現在の感覚では想像しにくい話ですが、当時の藤山一郎には、それだけ自分の音楽的能力に対する自信があったのでしょう。
ところが、現実は簡単ではありませんでした。
藤山一郎が昭和8年にビクターへ入社し、プロのレコード歌手としてスタートすると、次々とライバルが登場します。
さらにレコード会社も、宣伝力や販売力を駆使して専属歌手を売り出していました。
藤山一郎は「歌が上手ければ売れる」という単純な世界ではないことを、プロの現場で思い知らされていったのです。
この経験は、後の藤山一郎の歌手人生を考えるうえでも重要です。
本人も自伝の中で、それまでの自分の認識が甘く、幼稚だったと振り返っています。
二村定一への憧れから始まった藤山一郎の「追い越したい」という思いは、やがて厳しいレコード市場で生き抜くための競争心へとつながっていったのではないでしょうか。
まとめ
- 二村定一は、昭和初期の日本でジャズや洋楽を取り入れた歌唱で人気を集めた先駆的な歌手です。
- 藤山一郎は二村定一のピアノ伴奏を務め、歌い方や歌詞の明瞭さなどを間近で学びました。
- 藤山一郎は二村定一に憧れるだけでなく、「いつか追い越したい」という強いライバル心も抱いていました。
- 二村定一ら人気歌手の月収1000円という話を聞き、藤山一郎は自分なら2000円を目指せると考えていました。
- しかしプロの世界では、歌唱力だけでなくレコード会社の宣伝力や販売力、ヒット曲の有無が重要になることを実感していきました。
- 二村定一との出会いは、藤山一郎にとって憧れの原点であると同時に、プロ歌手としての競争心を育てるきっかけになったといえます。
▼ 前回の記事はこちら
レジェンド歌手・藤山一郎シリーズ第6弾はこちら↓をご覧ください。
画像1アイキャッチ.jpg)
▼ あわせて読みたい記事はこちら↓をご覧ください。
第7弾画像1アイキャッチ.jpg)
画像1アイキャッチ.jpg)
コメント