藤山一郎といえば、「酒は涙か溜息か」「丘を越えて」などを歌い、昭和歌謡史に輝く名歌手として知られています。
しかし、東京音楽学校時代には、校則を破ってレコードの吹き込みを行っていたことをご存じでしょうか。
しかも、そのアルバイトには、遊びや小遣い稼ぎとはまったく違う事情がありました。
家が抱えていた莫大な借金を返すため、藤山は母親に稼いだお金を渡していたのです。
やがて学校側に発覚し、一か月の停学処分を受けることになります。
藤山一郎が校則を破ってまで働いた理由とは?
画像2.jpg)
藤山一郎が東京音楽学校(現在の東京藝術大学)に入学したのは1929年(昭和4年)です。
しかし、このころ藤山家は事業上の問題などから、現在の金額に換算して1億円ともいわれる膨大な借財を抱えていました。
そこで藤山は、家計を少しでも助けるため、学校の校則に反してレコードの吹き込みを始めます。
当時の東京音楽学校には、「故なくして学生の校外での演奏を禁ず」という規則があり、学生が外部で演奏などをすることは原則として禁じられていました。
藤山は学校に知られないよう、複数の芸名を使ってアルバイトをしていました。
音楽学校の学生であることを隠しながら歌うという、決して気軽な仕事ではありません。
それでも藤山が働いたのは、家の借金返済と自分自身の学資のためでした。
後に藤山は、校則違反そのものに悔いはなかったものの、どこか後ろめたい気持ちを抱えていたと振り返っています。
藤山一郎と古賀政男を結んだ「キャンプ小唄」とは?
画像3.jpg)
そんな藤山の運命を大きく変えたのが、日本コロムビアのレコーディング・ディレクターだった加藤武二氏との出会いです。
加藤氏から作曲家の古賀政男を紹介された藤山は、古賀の新作「キャンプ小唄」を吹き込む機会を得ます。
伴奏を務めたのは、古賀政男の出身校である明治大学マンドリン部でした。
この吹き込みで藤山の歌声を気に入った古賀は、その後も藤山と組んで作品を発表していきます。
そして誕生したのが、後世まで歌い継がれる「酒は涙か溜息か」「丘を越えて」などの大ヒット曲です。
興味深いのは、藤山が受け取っていたレコード吹き込みの報酬です。
ヒットしたから報酬が増えるという仕組みではなく、アルバイト料は一律だったといいます。
それでも藤山自身の回想によれば、当時の一般的なサラリーマンの給料の10倍以上に相当するほどの収入でした。
ところが藤山は、そのお金を自分のために使いませんでした。
稼いだアルバイト料をそっくり母親に渡し、父親の借金返済に充ててもらったのです。
藤山一郎はなぜ一か月の停学処分で済んだのか?
画像4.jpg)
レコードが売れるにつれて、藤山の不安も大きくなっていきました。
街のレコード店の前を通った際、自分が吹き込んだ曲が流れていると、うれしさと同時に「学校に知られてしまうのではないか」という恐怖を感じたそうです。
しかも、レコードが売れても売れなくても報酬は同じでした。
そのため藤山は、「どうか私のレコードが売れませんように」と祈ったといいます。
しかし、ついに学校側に知られる日がやってきます。
ある日登校すると生徒主事から呼び出され、職員室へ来るよう告げられました。藤山は瞬時に「ついにバレた」と悟ったといいます。
実はそのころ、学校では藤山の処分について教授たちが会議を重ねていました。
ところが、慶應普通部時代から藤山を知る恩師が、アルバイトは遊興費のためではなく、家の借金返済が目的であり、稼いだ金を母親に渡していたことを教授会で説明しました。
さらに、藤山の日頃の学業成績なども考慮され、乗杉嘉寿校長は退学ではなく、一か月の停学処分とする決断を下しました。
しかも、その停学期間は昭和6年12月10日から翌7年1月10日まででした。
つまり、実質的には音楽学校の冬休みと重なる時期だったのです。
藤山は校長の温情ある判断に深く感謝し、自らの校則違反についても深く反省したといいます。
まとめ
- 藤山一郎は東京音楽学校時代、家の借金返済などのため校則に反してレコード吹き込みをしていました。
- 「キャンプ小唄」をきっかけに古賀政男と組み、「酒は涙か溜息か」「丘を越えて」などのヒット曲を生み出しました。
- アルバイト料は当時の一般的なサラリーマンの給料の10倍以上ともいわれ、その大切な収入を母親に渡していました。
- 学校側に校則違反が発覚しましたが、恩師による事情説明や学業成績なども考慮され、退学ではなく一か月の停学処分となりました。
- 藤山一郎にとってこの停学は、単なる校則違反の処分ではなく、家族を支えようとした若き日の苦悩と責任感を象徴する出来事だったのです。
▼ 前回の記事はこちら
レジェンド歌手・藤山一郎シリーズ第4弾はこちら↓をご覧ください。
画像1アイキャッチ.jpg)
画像1アイキャッチ.jpg)
コメント